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機動戦士ガンダム オルレアンの聖女 2 1234567891011

油の臭いと重々しい金属音が溢れるハンガーで、ハサウェイは”彼”との初対面をした。

RX-104ガンダム・オデュッセウス――神話の英雄の名を冠するガンダムタイプのMSである。
30m級の機体は眩いまでに白く、ハサウェイにνガンダムを間近で見たあの時の光景を思い出させた。

サイコミュを有し、機体の反応速度は現時点で存在が確認されている機体全てを凌駕する。
基本兵装のビームライフルも新機軸の設計により、初速は従来の1.5倍とも2倍を越えるともされている。
カタログスペックとしては、正にガンダムの名を頂くに相応しい機体である。

 

「ユニットの換装によって、MS単体での飛行能力を有することも可能だ…単機能フライトユニット装備形態での別名はペーネロペー…」
機体の解説をするだけで、何故にこうも嫌味ったらしく聞こえるのだろう?
「もっとも…今呼ぶとしたら……アルゴスだがね」
頭一つ小さい、いかにもな風貌の男――開発主任ローズマリーだ。

人格が声を作るのか、声が人格を作るのか?
人当たりの良いハサウェイですら、この男には正直嫌悪の念を抱かずには入られなかった。

声が不愉快だ。他人を見下すような、それでいて媚びるような卑屈さを帯びたイントネーション。
視線が不愉快だ。どこか焦点のずれた様な目が、無感情でありながらも器質的に自分を観察しているかのようなその視線。

兵器の開発者の容貌としては満点に近いのかもしれない。死を生み出し死を運び死を演出する新兵器開発者。
任務でもなければ目を合わせるのも嫌な男だが、民間人でありながらもこの任務完遂までは彼が事実上のハサウェイにとって直属の上官だ。

「アルゴス…あのバックパックに取り付けられたユニットの名前でしたね」
バックパックから伸びる異様な4基のコンテナに視線を移す。

「そう……機能的だと思わないかね?AMBACユニットとしても機能しつつ……機体の最大戦力となる…
大火力と機動性というのは基本、両立しがたいがこのシステムは非常に高バランスでそれを達成している」

「4基のファンネルコンテナに5基のファンネル、20基のファンネル搭載とは豪勢ですね」
「僕は、自分自身NTだとは思っていません。何故僕に?」

アルゴス・ユニットの装着はハサウェイの予期するところではなかった。

規模こそ小さいが抗争は多い。ジオン残党やそれを名乗るテロリストとの実戦で優秀な戦績を挙げている自分だ。
素体としてのオデュッセウスの戦闘データのために呼び出されたと踏んでいた。
新型サイコミュによる、機体追従性向上…そのテストケースのサンプル採取ではなかったのか?
20基のファンネルを完全制御など、あの伝説のエース、アムロ・レイでもなければ不可能だろう。

「私はね…」
指を顎にあてがい、上目遣いなのか白目をむいているのか分からない視線がハサウェイを捉える。

「酢豚が好きでね…」

ハァア!?と、思わず飽きれた声を出しそうになるのを堪えたハサウェイを気にするそぶりも見せず、ローズマリーは続ける。

「パイナップルを入れるだろう?パイナップルのタンパク質分解酵素…ブロメラインが肉を柔らかくする素敵な素敵な隠し味だ…
かといって、缶詰一杯のパイナップルを鍋にぶちまけるマヌケは…いないだろう?」

ならば尚のこと20基のファンネルなど意味不明だ。要領を得ない回答ではぐらかす癖もハサウェイにこの男を嫌わせる点である。

「NT能力も同じでね、キミくらいの方がアルゴスには向いている」
いやらしく唇を歪めてローズマリーは哂った。
「0では困るが100でも困る。最適なのは50か40、それとも10か?NT適正が査定値ギリギリのキミを見つけられたのは僥倖だな」

褒められている気はしない。だがこの男は、心底ハサウェイが適任だと思っている。
なんとなくそう理解できるが、良い気がするはずも無かった。

純白の機体に向き直る。十字架を背負った英雄――そんな柄でもないフレーズが何故か浮かんだ。
クェスのバンド好きがうつったか?ローズマリーに気取られぬよう、ハサウェイは一人苦笑した。

機動戦士ガンダム オルレアンの聖女 2 1234567891011