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機動戦士ガンダム オルレアンの聖女 5 1234567891011

チンクエは哂っていた。
チンクエは震えを止められなかった。
武者震えだ。この興奮、震えをどう鎮められようか?

「ふ…ふふふ…そうか、そんなところから狙えるか、この距離で、この間合いで!この2機の合間を撃ち抜けるかぁ!!」
消耗した者を打ち倒す事など、冷めたディナーの残りカスほどの興味も沸きはしない。
強者との遭遇、強者との戦闘――。
宴だ。一度味わうともう忘れられぬ甘美な瞬間――彼の望むそれが、今ここにあるのだ。

「仲間のピンチに颯爽と駆けつけるヒーロー…ってのが、最近の流行なのかい?ハサウェイ」
流した冷や汗が落ちるよりも早く、ビックスの口からそんな軽口が飛び出す。
不思議なものだ、死にかけていたというのに、今はこんなにも安堵している。

白銀の光となって、ガンダム・オデュッセウスは馳せ参じた。
「遅れてすまない、ビックス…先行していたギラ・ドーガは”止めた”…あとは、僕に任せてくれ」
4つ上のビックスへのその言葉には、エースの風格すら感じさせる。
ハサウェイ・ノア――コリントス隊攻撃隊長の存在は、彼を知る者に勝利への絶対の信頼を与える。

満身創痍のジェガン2機が後退する。
損耗が激しいギラ・ドーガ2機も動きを止め、招かねざる客人に神経を集中させる。

赤いギラ・ドーガと純白のガンダムは相対した。
攻め上る者と守り防ぐ者…デプリ漂うこのエリアは事実上の最終防衛ラインとなっていた。

 

モニターに映し出される純白の機体を見つめ、チンクエは何を思うか?
データには無いガンダムタイプのMS――。
ガンダムタイプが連邦の最新技術の集大成として開発されてきた前例を考えれば、
機体性能は相当のものであることは確かであろう。

「ガンダム…連邦め、正当なる支配者の象徴のつもりか?なってないなっ!
虚像にすがってでもこの不当なる統治を…圧政をっ!正当だとほざくかっっ!!」
チンクエの眉間に深くシワが刻まれる。

ネオ・ジオンの高性能機として上げられる機体の中に、ヤクト・ドーガの名がある。
総帥専用機としてはいささか物足りないとの評であったが、その基本スペックは極めて高い。
そのベースとなった機体こそが、量産機ギラ・ドーガである。NT能力を持たないチンクエに、かさばるサイコミュの導入など不要であった。
可能な限り高機動・高出力にチューンされた赤いギラ・ドーガは、カタログスペックではヤクト・ドーガをも上回る。

だが――専用OS CAの補助をもっても敵は最新鋭のガンダム…厳しいか――。
しかし、そんな事など良くあることだ。戦力差・能力差、そんなものは戦場では言い訳に過ぎない。

「跳ね返してやるさ、グリプス以来、私はそうしてきた…」
相手が脅威であればあるほど、この男にとっての喜びは増すのだ。
――連邦の象徴を駆る者よ、お前は戦士か?

 

ハサウェイの瞳に、相対するギラ・ドーガの赤が鮮やかに映る。
「もともと汎用性・拡張性に優れた傑作機だ…あのギラ・ドーガ…中身は別物と思って良いかな?」
このオデュッセウスとの模擬戦用にチューンされた試験用ジェガン…
それに乗ったコリントス隊の腕利き2人をここまで追い詰めた相手である。油断はしない。

赤いギラ・ドーガの随伴機2機、彼らの動きが止まったのはハサウェイにはありがたかった。
ビックス達を追撃・ラインを突破するというのであれば、この状況だ…。”止むを得ない”。
だが、幸いにもその動きは無い。
ここは赤いヤツに任せ、静観を決め込む気か?

ならばハサウェイにとって、敵は赤いギラ・ドーガ1機となる。

状況認識に彼らが要したのは1分か?10秒か?数秒だったのかもしれない。
ほぼ同時――2機のMSは同時に奔った!

機動戦士ガンダム オルレアンの聖女 5 1234567891011