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ファンタジーは突然に1234

二人で缶を片手にホッと一息つきながら流れ行く人波を眺めること数分
ミクルちゃんはまろやかで優しいミルクティーに喉を潤した事によって
オレの見た感じじゃ本人もまろやかになってきたように思う
バトル第一フェイズでは怒涛の先制攻撃で優勢に駒を運んだが
まだまだ相手の戦力は未知数、どんな隠し兵器が飛び出すか分かったものじゃない
まずは相手の性能を把握する事が先決だ
さぁ、弛緩した空気を震わす第二フェイズの開幕だ!

『もう一息付けたか、ミクル?』

『うん、喉が柔らかくなった感じ』

『よし、じゃあさっきの話の続きをするぞ
まず、分からないのが当たり前とオレは言ったが
それはさっきの問いに対しての言葉じゃない
さっきの問い自体の答えはそれまでのオレの言葉の中に答えがちゃんと含まれていたんだ
オレはさっきこう言ったはずだ
『全ての情報を共有する存在など、二つに分ける必要がそもそも無い。そんなモノは一個の存在力で事足りる』と
つまりだ、オレとミクルは別個の情報を持つ存在であるがゆえに二つに分かたれているんだ
ここまでは良いか?』

『う…うん…何となく…』

『OKだな、じゃあ、次に行くぞ
オレたちは別個の情報を持つ存在であるが故にオレとミクルでは保有している情報が違う事がある
だから、オレはさっき分からないのが当たり前だと言ったんだ
だが、それならば何故、オレたちは別個の情報を持つ必要があるのか?
それは、オレたちが奴らの手に落ちる事があっても全ての情報を知られないでいられるように
重要な情報を分散する為なんだ
さらに、情報の漏洩(ろうえい)を最小限に抑える為
オレたちにはアルマティファンのような攻撃を受けた際に一時的に大部分の記憶を抑えるリミッター機能があるんだ
さっきミクルに会ってすぐの時にオレの受け答えが安定していなかったのも
ミクルの呼び方が普段と違っていたのもそのせいだ
だが、オレたちはこの状態に陥っても相方の情報を視聴認識する事で記憶を回復し
デュラキュティルをエンゲージ可能領域まで高める事ができる
だから今、ミクルと接触しミクルのデータを視聴認識する事で少しずつ回復し、オレは現在の状態に至っているんだ
だけど、デュラキュティルが足りないのは変わらない
さらにミクルのデータに触れて記憶を回復させデュラキュティルを高める事が必要なんだ
そういうワケで、ミクルのデータをもっと教えてくれないか?』

自分でも『え、そうだったのか!?』と思う都合の良さ満載で送る即席の説明
己の口車の回転の速さに我ながら感心する
さぁ、現在のオレの戦力で出来うる最大の攻撃だ
ミクルちゃんの反応や如何に!?

『えと…データってどんな事を話したら良いのかな?
ミクルのアリケルトサバディーのクラウスマイン値とかを話せば良いの?』

母さん、この娘の反応は素晴らしいです!
見事に意味が分かりません!!
だが…ミサイルの方向修正はオレのさっきの攻撃の効き目で容易になっている
多少の【妨害『電波』】でオレを止められると思うなよ!

『いや、そんな重要な事じゃなくて良いんだ
例えばミクルのフルネームとかスリーサイズや住所や電話番号とかの身近な話で良いんだ』

『ふむふむ…なるほど…じゃあ言うね
ミクルのフルネームはミクリアール=ランドボルグ=アルメツァリーネ=イクシオ=サトゥルマディガンで
スリーサイズは上からクラネルトベス・バドゥルハトゥム・クライアメヌムスで…』

『待った、待った、待った!』

それは何処の星の住人の名前と数値単位ですかと!?
全く予想していなかった攻撃では無かったが
この破壊力は予測値を遥かに上回っているぞ!
しかも一発が対戦車ライフル並みの威力でありながら突撃銃並の この速射性
二つが相まって恐るべき制圧力と化しております!
修正! 修正する!!
もう、これが若さかってくらいに修正するぞ!!

『ミクルの真の名前とかじゃなくて、学校とかで呼ばれてる仮の名前とかで良いんだ
数値単位とかもこの世界でよく使われてるので言ってくれ
その方がブレインアラートが刺激され易いんだ』

『は〜い、じゃあ言うね
春日野 未来(かすがの みくる)、12歳、上から66・53・68だよ』

『そうそう、そういうので良いんだ
おかげでデュラクティルが多少上昇してきた
この調子で頼むぞ、ミクル』

『うん、どんどん行くから、早くリゾナンスアクトできるまで回復しちゃおう』

そこからは割りとすんなりと事が運んだ
新たな電子戦用兵装を導入する必要もなく静観するだけで情報戦は高い戦果を上げた
ぶっ飛んだ電波語を体得しているだけで、装甲を剥げば至ってノーマルな内装だった為に逆に驚いたくらいだ
家もどこかの星雲とかにあるわけでもなく直ぐ近くの場所で、家族にリトルグレイなどが居るわけでもなかった

『う〜んと…こんなモノかな? どう、お兄ちゃん? だいぶ回復できた?』

一通りの給油燃料は流したが補給状況はどのくらい進んだのかと訴えてくる
情報戦を制したおかげで彼我戦力は大体把握できたが
このままランデブーを決め込むには相手の装甲は非常に目立つ
戦場に金ぴかに塗装した機体を伴って侵入するなど入隊したばかりの新兵でもすまい
ステルスとは言わないが迷彩色を施すくらいはしないとマズイなこりゃ、というのがオレの結論だ
だから新たな戦術を発動する

『ああ、かなりデュラキュティルは上昇してきた。だけど、一押し足りない感じだ
かといってこれ以上ミクルのデータに触れても効果は薄いと思う
そこで、イニシエーションを行って強制的にデュラキュティルを上昇させようと思う』

『イニシエーション? それってどんな事? エクネシャービェをライアルドペイするような感じ?』

相変わらず彼女ワールドの用語はレーダーでは識別不明だが
今からそんな事は瑣末事に変わる

『いや、そうじゃない。イニシエーションは苦行を行う事でオレたちの能力を向上させる儀式なんだ
これにより強引にデュラキュティルを高める事ができるんだ』

『すご〜い。じゃあ、すぐにイニシエーションしてリゾナンスアクトできるようにしようよ』

わ〜い、という感じでにぱ〜と笑うミクルちゃん
未だにリゾナンスアクトが何かは分からないし聞く気も無いが
彼女ワールドでは重要な何からしい
だが、そんな用途不明の兵装は『不要』だ

『それだ!』

『えっ?』

何がそれなのか、と首を傾げる小動物

『いいか、ミクル。さっき言ったようにイニシエーションは苦行を行う事でオレたちの能力を上昇させる儀式だ
そしてその苦行とは、リゾナンスアクトなどの言葉を一時封印し
周囲の無知蒙昧なモノたちと同じレベルまで自身を落とす事なんだ
しかも、オレだけじゃなくミクルも一緒に行わないと効果が無い
だから辛いだろうが回りの連中と同じような行動をしなくてはいけない
その上、デートと呼ばれている一見して益体も無い事をもしなくてはいけないんだ』

『え…? ミクルたち、世界の真理に至ってるのにそれを封印しないといけないの?』

どうやらオレたちはどこぞの木の股から生まれた偉い人クラスに何かを知っていたようです
新手の教祖に成れる勢いだな、こりゃ
だが、そんな偉人になる気は毛頭無い

『わかってくれ…もう、こうするしかリゾナンスアクトを行えるまで自身を高める方法は無いんだ
オレたちはこの無力なままで指をくわえて奴らを放置するわけには行かないんだ』

我ながら何をわかれば良いのか全く持って不明な論法
果たしてこの一押しで戦況は覆るか!?

『……うん…わかったよ…ミクルやってみる』

わかってくれましたよ、この娘!!

『わかってくれたか、ミクル!』

今、オレの中の全米が拍手喝采!
オレ脳内米の国大統領も『感動した』と涙を流しております
ありがとう、不思議ワード リゾナンスアクト!
未だに意味は分からないが、君は大いに貢献した!
ありがとう、『奴ら』さんたち!
どこの次元の生命体か知らないが、君たちがミクルちゃんにとって強敵であったからオレはここまで来れた!
ありがとう、ありがとう! サンキュー! 謝々!!

『よし、ではイニシェーションを開始する!
まずは二人でどこかに食べに行くぞ。ミクル、何を食べたい?』 

『う〜んと…じゃあ、ハンバーグ〜』

電波など混入する事がない打てば響く普通の反応、普通の対応、これですよこれ
それに、何とも可愛いチョイスじゃないか
よし、ならば

『ハンバーグだな。よし、良い店を知ってるから連れてってやるよ』

『どんな店だろ? ちょっとドキドキするよ』

しばし歩き、目的地に着く
豪奢さは無いがファミレスと違って落ち着いた雰囲気のする中堅どころの店だ

『うわ…ここ高いよ? 大丈夫、お兄ちゃん?』

店の前のボードに書かれている値段を見て不安そうな声が発せられる
しかし、都合の良いことに今日は残弾がタップリある

『心配するな、今日は余裕があるんだ。ガシガシ食って構わないからな』

この狩場クラスなら少しばかり的が多くても射ち漏らす事は無いはずだ
ミクルちゃんは『良いのかなぁ?』という顔で中に付いてくる

店員さんに案内されてカウンター席に横並びに座る
ミクルちゃんは浄解しっぱなしなので横並びにならざるを得ない為
テーブル席だと座席が無駄に余る事になるのでカウンター席でも不満はない

運ばれてきた水を飲んで一息付いてから
店員さんに黒毛和牛100%のハンバーグステーキをコースで二つ頼む

しばらくしてオードブルとスープが運ばれてきた

『うわぁ、すっごい。これ本当に食べて良いの、お兄ちゃん?』

『ああ、背が伸びるようにいっぱい食って栄養分を補給しろよ?』

『わぁ〜い、じゃあ、頂きま〜す』

ミクルちゃんが意気込んでオードブルに手を付けようとする
しかし、浄解を続けるために片手が塞がってる為に
もう片方の手だけで補給活動を処理しようとするせいで上手く目標を捕らえられない様子だ

『ありゃ? う〜ん… とりゃ! あぅぅ…』

拙い得物の捌き方のせいで目標を上手く捕らえられないどころか皿が動き出す始末
座席の位置的に利き手の方が塞がっているのが一番の敗因だろう
仕方ない、ここは助け舟を出すか

『ミクル、オレが口に料理を運んでやるからアーンしてろ
心配しなくても熱いのはフーフーしてやるから火傷させたりはしないからさ』

『え…でも…それってちょっと恥ずかしいよ…』

『ミクルの片手が塞がってるのはオレのせいなんだから
オレが自分の不出来な身の尻拭いをしないと帳尻が合わないんだ、是非やらせて欲しい
役得だと思って身を任せてくれよ』

『う〜ん…じゃあ、お願いね、お兄ちゃん』

『よし、きっちり任されたぞ』

手始めにサラダを口に運んでやる
口内に入ってきたフォークから料理をミクルちゃんが咥えて取ったのを見て得物を引き抜く
もきゅもきゅとハムスターの様にほっぺを膨らませて幸せそうに噛み締める姿を見て
自分の方が役得だなこりゃぁと思ってしまう

続けてスープ
これは流石に熱いので言った通りにフーフーしてミクルちゃんの口に運んでやる
ツルンと飲み込んでニコニコ顔でこちらを見て
親鳥の捕まえたエサを求める雛鳥の様にまたアーンと口を開く
やべぇ、本気で可愛いぞ、この娘!

この愛い小動物の仕草に気分が高揚してきて嬉々としてしばし補給を手伝い続ける
何度目かの皿とミクルちゃんの口の間の往復をこなしているうちに
店内のざわついた雰囲気を感じた

少し周りを見回すと、店内の男連中が少々殺気立ったような風にこの補給作業を見ているのに気付く

電波さえなければミクルちゃんは子役タレントとかしててもおかしくないクラスだもんなぁ
よくよく考えればオレがこの娘とこうしているのは、ある種のファンタジーと言えるくらいの奇蹟かもしれない
客観的に考えて釣りあいの取れてるカップルだとは自分でも思えないが
ぎゅっとオレの腕を抱きながら嬉しそうに口を開けて補給物資を求める姿は仲睦まじい関係にしか見えないワケで…
周囲の野郎共の羨望の眼差しに仄かな優越感を感じて、ちょっとイジワルをしてみたくなった

オードブルが片付いて本命のハンバーグステーキが置かれたところでミクルちゃんの目はランランと輝く
早く早くと言わんばかりに口を開けてハンバーグの投下を待っている
ハンバーグの基本は表面を固焼きにして肉汁を中に閉じ込める事らしいが
ここのハンバーグは非常に柔らかくナイフなど使わなくてもフォークだけで十分切れた
しかし肉の柔らかさに反して肉汁はちゃんと中に閉じ込められていてとろ〜りという感じだ
うむ、熟練の技という奴だろうか
一口サイズに切ったハンバーグをフォークに刺し
さっきまでと同じようにフーフーして熱を取ってからミクルちゃんの口元に運び
直前で方向転換して自分の口に運び、唖然としている目の前で美味しく頂いてみる

『う〜む、美味、美味。やっぱし黒毛和牛100%ってのは美味いもんだなぁ』

『うわぁ、ミクルのハンバーグがぁ!?』

『ハハハ、ミクルがあんまりにも無防備に口開けて待ってるから、ちょっとイジワルしたくなってな
あ〜でも、これ本気で美味いからオレが独り占めしちゃおうかなぁ?』

『うわ〜ん、ダメだよ、ミクルもハンバーグ食べたいよぉ』

お預けどころか食い扶持が無くなると聞いてミクルちゃんは必死だ
さすがにかわいそうだからそろそろ譲ってやるか

『ウソだよウソ。ちゃーんとミクルにも食わせてやるから、もう一度アーンしてな』

『うん、アーンするから絶対だよ?』

『ちゃんと運んでくれるかなぁ?』と不安そうにしながら再度アーンと口を開ける
今度こそ運んでやってフォークを引き抜く
美味しそうにもきゅもきゅと頬袋を動かして幸せそうに安堵しているところで
更にもう一つ用意していたイジワルという爆弾を投下してみる事にする

『いやぁ、これで関節キッスが成立したわけだ
ミクルの口に運んだフォークでオレが食って、またミクルの口に運んだからなぁ
関節キッスだけどこれはかなりディープだよね』

『ゴホッ、ゴホッ!』

ハハハ、驚いてむせちゃってるよ
いやぁ、役得、役得
周りの野郎共の視線も更に強くなってきてますな

『ちょ…フォーク! フォーク代えてもらぅ〜!』

『まあまあ、そんな慌てんなよ
それとも何か? そんなにオレと関節キッスになったのが嫌だったのか?』

『え…その…そんな嫌って言うわけじゃないけど…ただ…恥ずかしくて…』

周りからの視線は殺気立つどころか視線で射殺すと言わんばかりに強くなる
この辺で止めとくか、一人で路地裏とか歩いてる時に知らない野郎に撲殺とかされたくないしな

『仕方ない、新しいフォークをもらってやるよ』

店員さんに新しいフォークを用意してもらい、補給活動は速やかに再開された
ここに来て思う。やっぱしこの娘は電波さえ封印しちゃえば最高だと

ファンタジーは突然に1234